連合ニュース 2024年

 
2024年12月04日
厚生労働省に対し、当面の政策課題に関する要請を実施
要請書手交の様子
 連合は12月3日、伊原厚生労働事務次官に対し、当面の政策課題に関する要請を実施しました。

 冒頭、清水事務局長が伊原事務次官に要請書を手交した後、「働く者の意見として受け止め、今後の政策や予算編成に反映いただきたい」と述べるとともに、以下3項目を中心に当面の政策課題に関する要請事項の説明を行いました。
(1)良質で切れ目のない医療・介護の提供体制の構築に向けた財源確保と労働条件の継続的な改善
(2)能力開発機会の確保に向けた「人への投資」に関する財政支援や環境整備の支援強化
(3)最低賃金の地域間格差の是正や労務費の価格転嫁に向けた予算措置
 
 要請を受けた伊原事務次官は「連合が働く者、生活者の立場から、様々な活動に精力的に取り組んでいることや、能登半島地震ボランティア活動でも被災者に寄り添った支援を行っていることに深く敬意を表する」と述べました。
その後、伊原事務次官および関係局長から、以下のとおり回答がありました。
 
(1)訪問介護人材の更なる確保に向け、補正予算案では、研修体系の整備をはじめ、経営改善に向けた取組の補助、人材確保に向けた協議会の設置・運営の補助、仕事の魅力発信などの支援策を盛り込んでいる。報酬改定における処遇改善や、補正予算案における生産性向上・職場環境改善等の支援により、医療・介護分野の更なる賃上げを推し進めていく。
(2)「人への投資」に関する概算要求では、人材開発支援助成金の賃金助成の拡充、や団体等検定制度の活用促進、非正規雇用労働者等が働きながら学びやすい職業訓練試行事業の実施などに重点的に取り組むこととしている。また、教育訓練休暇制度導入時の経費補助や、教育訓練休暇給付金の導入促進を行うなど、希望する誰もが主体的に能力向上を図ることができる環境整備を進めていく。
(3)最低賃金については、2029年までに1500円を実現することや地域間格差の縮小に向け、政府として努力していく。政労使の意見交換で中期的な引き上げの考え方を議論したうえで、中賃の諮問に向けて、公労使の三者構成原則を大事にしながら、円滑な審議を進める。また、中小企業が賃上げしやすい環境整備に向け、総合経済対策では業務改善助成金の充実を盛り込んだ。地方版政労使会議などの機会を捉えて、価格転嫁対策や中小企業の生産性向上支援策を推進する。
 
 その後の意見交換では、連合から、以下の点を指摘しました。
〇規制改革会議において最低賃金の決定プロセス見直しに言及されたこと、それが報道されたことは遺憾である。補正予算において業務改善助成金を300億円計上されたが、支出のペースを見ると、一年で底をつく可能性があるため、再来年に向けた予算措置も前向きに検討いただきたい。
〇訪問介護事業者の倒産増加の要因検証を行うとともに、訪問介護の基本報酬のマイナス改定が影響しているのであれば、介護保険サービスの根幹でもある訪問介護を下支えするためにも介護報酬の期中改定について検討いただきたい。
〇「人への投資」は個人支援策を中心に強化されているが、企業がキャリア支援を行うことが重要であり、その必要性について引き続き、周知徹底をお願いしたい。新たに設けられた雇用保険の新制度である「教育訓練休暇給付金」についても利活用に向け周知に努めていただきたい。
〇労働者性の判断基準については、労働基準関係法制研究会においても分析・研究の必要性が示されている。社会環境の変化を踏まえた労働者概念の拡充に向けて、前向きな見直しの議論を行っていただきたい。
 
 最後に、清水事務局長から「賃上げのステージ転換と定着が大事であり、中小零細企業が賃上げできるよう価格転嫁の取り組みが不可欠である。安定した経済社会の発展と、様々な年代の人が夢と希望を持てる施策を進めることを期待する」と述べました。
 これに対し、伊原事務次官は「今後の予算や制度改革について相談したい。とりわけ賃上げに向けては、厚労省として最大限努力する」と述べ、締めくくりました。